そういうことか!ニッポンのお魚ニュース

ニュース解説:山田雅之氏

2015年現在、中央魚類(株)広報室長。著作活動に『にっぽん魚事情』(時事通信社刊・共著)、朝日新聞社夕刊連載「築地うおっち」(平成20〜24年毎週火曜)など。講演活動多数。水産庁主幹プロジェクト「お魚かたりべ」に任命されるなど、幅広く水産・魚食に関する情報発信と活動を行なう。

11月

あなたの食べているシシャモの国籍
〜アイヌの民を救った純正国産シシャモ〜

 食卓や居酒屋などの飲食店でおなじみの「子持ちシシャモ」。その名前から、当然のように「子持ちのシシャモのことだろう」と思えば、さにあらず……。アイヌの言葉に起源を持つ「本当の、日本産シシャモ」についてのお話です。

純正国産のシシャモとは

 お魚売り場で販売されている子持ちシシャモ。体の半分近くを占める卵のコリコリした食感がたまりません。1年を通して販売されているこの子持ちシシャモの産地は、大半がノルウェーやアイスランドです。「子持ちシシャモ」はもちろん商品名で、標準和名は「カラフトシシャモ」、英語では「カペリン」です。実はこのカラフトシシャモは、日本ではほとんど漁獲がありません。
 日本で漁獲されるシシャモは、標準和名がまさに「シシャモ」。カラフトシシャモとは全く別物で、しかも、日本固有の魚です。日本にしか生息しない魚なのです。
 そして、11月はシシャモが産卵する時期です。これに合わせて行われるシシャモ漁は、北海道太平洋岸では秋から冬へ向かう季節の風物詩となっています。

シシャモもサケも、北海道拠点の回遊魚

 シシャモが獲れるのは北海道の太平洋岸です。その生態は変わっていて、サケと同じように川で生まれ、海で育ちます。そして生まれた川に戻って産卵します。こういう魚を「通し回遊魚」と呼び、シシャモやサケのほかにも、アユやボラ、ウナギなどがあります。
 サケは北海道から関東地方の河川に遡上しますが、シシャモは北海道の道東地方から胆振地方までの間にある十勝川や、阿寒川、鵡川など8つの川にしか遡上しません。その時期は1年のうち産卵期の10月〜11月のわずか2か月ほど。生まれた川を目指すシシャモを漁獲する桁網漁は、この時期に沿岸で行われます。
 残念ながらシシャモの漁獲は減る一方で、昨年・一昨年とも過去最低の数百トンとなっており、今年も10月から始まった漁は昨年並みのようです。もちろんシシャモの孵化放流も行われていて資源保護を目指していますが、気候変動などが地元の方々を悩ませています。

 シシャモはアイヌの言葉で「シシュハモ」。「シシュ」は柳の葉、「ハモ」は魚を指します。古代アイヌ民族が飢餓に陥った際の食料として危機を救ったとされ、以来、大切にされてきたとか。
 日本でしか獲れず、しかも、限られた川に限られた時期にしか遡上せず、民族を救った魚。
 シシャモは神秘の魚といえます。

※ミスビットのシシャモ(カラフト)レシピはこちら

バックナンバー